鑑別に苦慮する口内炎 口腔扁平苔癬
こんにちは。院長の小野沢です。
以前にもお話しましたが、
なかなか治らない口内炎は注意が必要です。
今回は一般歯科診療で比較的
お見掛けする頻度が高く、
さらに2017年にWHOが提唱した
口腔潜在的悪性疾患
(oral potentially malignant disorders ; OPMDs)
に挙げられている疾患でもある
口腔扁平苔癬(oral lichen planus ; OLP)について、
少し専門的になりますがお話したいと思います。
口腔のみに限局するOLPは全扁平苔癬中25%を占め、
典型例では両側頬粘膜に網状の白斑として出現し、
白色線条の間にしばしば紅斑を伴います。
しかし、病態は様々で、
網状、斑状、丘状、線状、環状などの白斑のほか、
紅斑、びらん、潰瘍や、
まれに水疱などが混在します。
さらにこれらの病態は経時的に変化します。
OLPは頬粘膜のほか、
舌、歯肉、口唇などにも生じ、
両側性あるいは複数の部位に発症しますが、
時に片側性にあらわれる、
中高年の女性に多く見られる慢性炎症性粘膜疾患です。
発症にいたるメカニズムは未だに不明ですが、
病巣の成立には遅延型アレルギーに
類似した細胞性免疫反応が関与しているようです。
複雑な炎症巣を形成するためその鑑別診断も、
口腔白板症、薬物アレルギー関連病変、
移植片 対宿主病(GVHD)、
金属アレルギー関連病変、
天疱瘡および粘膜類天疱瘡、
エリテマトーデ、ウイルス性口内炎、
口腔カンジダ症、白色海綿状母斑など、
たくさんの病気が挙げられます。
そしてOLPは一般的に難治性で、
治療には長期間を要します。
治療方法はコルチコステロイドの
局所および全身投与やレチノイド、
グリセオフルビン、アザチオプリン、
ミコフェノール酸、ダプソンやシクロスポリンの
使用が報告されています。
これらの治療に対して難治性の症例に対して
光化学療法が施行された報告もあります。
私が大学病院勤務時代には
ステロイドに抵抗性のOLPに
セファランチンという薬の投与で
症状が軽快する症例をしばしば経験しました。
しかしその有効性の機序については
現在まで明確にされておらず、
現時点では保険で処方することが難しいです。
詳しく書けば生体膜安定化作用、
抗アレルギー作用、
副腎皮質ホルモン産生増強作用、
多核白血球の活性酸素産生抑制作用などが
炎症症状に対して有効に働き、
末梢循環改善作用による組織修復促進などが
有用であると推論されています。
セファランチンはほとんど
副作用の報告がないので、
長期連用が可能な点も含め
OLPの治療に有用であると考えます。
OPMDsはWHOにより
臨床的に明確な前駆病変であるか
正常粘膜であるかにかかわらず、
口腔における癌の発生リスクを有する
臨床状態と定義されておりますが、
そのなかにリストアップされているOLPは
白板症や紅板症に次いで
発がんリスクに注目すべき
重要な口腔粘膜疾患です。
少し詳しく「クイズで学ぶ口腔疾患123」と言う本に
OLPについて私が執筆しておりますので
興味がある方はご覧ください。
今後も口腔内の粘膜に生じる疾患は
鑑別を要する疾患が多いので、
時々お話したいと思います。
【医院からのお知らせ】
12月14日は第41回日本障害者歯科学会総会
および学術大会出席のため
クリニックは休診いたします。
久里浜駅前マリン歯科口腔外科
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